分子サイズが分子の性質に与える量子的な効果は、単分子と分子集合体との境界線付近に発現されることが期待されている。この分野の研究は、主に理論が先導して研究が進行してきたが、研究対象となるべき具体的な物質が存在しないため、物性に関する知見は限られていると言わざるを得ない。従来はポリマー、デンドリマー、超微粒子の科学がその対象として提唱されてきたが、そこで扱われる物質はある程度の分子量分布を伴った混合物でしかなく、研究遂行の大きな妨げとなってきた。ところで、合成有機化学は、複雑な天然物を実験室内で再現する一方、自然界には見出されなかったような特異な構造を有する人工有機分子の創成にも貢献してきた。近年では分子間相互作用を制御することにより、興味深い高次の分子集合体(超分子集合体)を得るに至っている。そこで、本研究では、構造が明確な単一物質で、かつ100Å以上の分子サイズを有する分子の分子設計とその合成を行った。
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