研究概要 |
1.重原子系の電子状態理論の研究のために開発してきた、スピン軌道(SO)相互作用を含むCI法の定式化を完成させ、論文発表を行った。この方法では特に、ユニタリー群、時間反転対称、二重点群など種々の群論的方法を用いて、高い効率を得ることに成功した。またSO相互作用を含むSCF法とMCSCF法を開発し、様々な原子、イオンに応用し、軽原子系から重原子系に移行するにつれて、波動関数の結合様式が変化する様子を調べた。また第6周期元素に対してでも、原子価殻の記述にはLS結合による配置間相互作用によって、十分計算精度が得られることがわかった。 2.複素座標法を用いたCIプログラムを開発し、今年度は、アセチレン分子の光イオン化断面積の計算に応用し、超励起状態のエネルギー、寿命を求め、13.3eV の極大の原因を明らかにした。この結果、13.3eV の状態は、(3σ_g)^1(3рσ_u)^1のRydberg 的な自動イオン化状態であり、その電子寿命は4.9fs と求められ、最近実験的に見積もられた7fs と良く対応した。またこの状態は基底状態に比べ、長いCH結合距離を持ち、光イオン化によってCH結合が振動励起することを良く説明する。 今年度は、当初、スピン軌道相互作用など相対論の効果を複素座標法を用いたCIプログラムに導入することを計画していたが、時間的に困難であった。しかし、アセチレン分子への応用が非常にうまくいったので、次年度に試みる価値は十分あると考えている。 3.その他に、Icl, HCl, Cl_2, I_2, Xe+I_2,ランタノイドイオンなどへの応用を行ない、例えばIcl, HCl, Cl_2,の光分解過程における非断熱過程の詳細を明らかにした。
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