研究概要 |
1.特に重原子系への応用を念頭に置いた、スピン軌道(SO)相互作用を含む配置間相互作用(SOCI)計算を高い効率で行うプログラムを作成し、汎用の量子化学プログラムの一つであるColumbusシステムに組み入れた。 2.塩素分子の励起ポテンシャル曲線をSOCI法で計算し、R=6Bohr位の遠距離において、Ω=1u状態間の非断熱過程がRosen-Zener-Demkov型に従うことを明らかにし、このモデルによって実験値と良く対応する微細構造分岐比を得た。また分解生成物の異方性パラメータ、生成物Cl^*の全角運動量J=1/2のorientationが示す量子力学的干渉効果が、この非断熱遷移のモデルで再現されることを明らかにした。 3.酸素分子の励起ポテンシャル曲線をSOCI法で計算し、特にA状態への振動子強度を計算し、実験値との良い一致を得た。また光解離過程において重要となる結合距離の長い領域でポテンシャル曲線を調べたところ、多準位、多段階の非断熱遷移が起っていることが判明した。 4.分子の電子共鳴状態の計算のために、複素座標法のプログラムを開発しているが、基底関数の最適化のために、エネルギー勾配法の応用を考察し、特に試験的に行った水素原子の光イオン化断面積の計算において、良好な結果を得た。 5.3価のランタノイドイオンの励起エネルギーを計算し、定量的な計算を行うためには、4fだけでなく5s,5pの分極効果を取り入れることが重要であることが分った。 6.Yとシクロオクタテトラエンのサンドイッチ錯体のイオン化エネルギーの計算を行ない、そのサイズによってイオン化エネルギーが変化する理由を明らかにした。
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