研究概要 |
近年、微細加工技術の進歩により、金属・半導体とその複合系を利用したナノスケール微細構造やクラスターによるデバイス・分子素子の開発が行われるようになった。本研究はそれらの系の電子状態について研究するとともに、電子状態計算プログラム・方法の開発を行った。ナノスケールのデバイスの例として、電極に挟まれたナノ構造デバイスについて調べた。一方の電極から界面へ入射する電子は、界面で反射するか透過する。この物理素過程は極めて単純であるが、これを個々の系について電子構造に基づいて理解することが、トンネル伝導・バリスティック伝導を応用した電子デバイス作成の第一歩となる。そして、半無限結晶表面の電子構造を第一原理から計算する方法を開発し、(1)結晶の複素エネルギーバンド構造、(2)界面の電子状態、(3)2電極間の電子伝導を解析するための一般的な計算手法を開発した。分子素子の例としてアルカリ金属により修飾されたフラーレン分子の電子状態について調べた。フラーレン分子は、電荷の入出力制御のできるコンデンサー素子として分子回路に用いられる可能性があり、修飾子による電子状態変化を調べた。Na,Kに対しては吸着個数6を境にしてアルカリ原子間に結合が生じ、Liに対しては価電子12個においても結合が生じない事が分かった。一方において、物質の電子状態エネルギーを計算するにために、密度汎関数法が用いられるが、多くの問題があることも知られている。そこで、密度汎関数法を、もう一度、定量的に見直し,多重項状態の電子状態計算に対して、GGX近似よりLDF近似の方が良いが、電子相関効果が大きすぎる傾向のあることが分かった。
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