研究課題/領域番号 |
11167201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 哲男 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20113524)
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研究分担者 |
山田 裕康 北海道大学, 電子科学研究所, 非常勤研究員 (70291937)
西山 宣昭 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (10198525)
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キーワード | 粘菌 / 細胞隔合 / 光応答 / 低温応答 / 走光性 / 行動 / 形態形成 / 運動リズム |
研究概要 |
細胞は変動する多様な代謝反応を基礎とするダイナミックな情報システムであり、機能の発現には、分子シンクロナイゼーションの仕組みが働いている。本プロジェクトは、粘菌を材料とし(1)システムサイズの自己制御、(2)情報機能素子であるリズム装置の自己生成、(3)結合振動子系における結合様式の自己制御、というわれわれが独自に見出した生成現象を分子シンクロの視点から解明し、新規材料設計の指針を得ることを目的とし、今年度は以下の結果を得た。 1)粘菌変形体の同調したフラグメント化の発見 低温刺激により多核の巨大アメーバ細胞である粘菌変形体は、刺激後約5時間で、約8個の核を含む球状をした多数のフラグメントに分裂する。数時間後には、細胞融合を開始して元の大きな変形体へと復帰する。フラグメント誘導の臨界温度は株に依存し、約15℃以下と約10℃以下と2グループに分かれた。 2)粘菌に対する周期的光刺激による判断の変更 青色光あるいは白色光は忌避刺激である。ところが振動的に照射すると、ある周波数領域で、粘菌の固有振動が外部震動に引き込まれ、さらにある周波数領域で、誘引応答がみられた。このように情報判断は、リズム性と関連していることを見出した。 3)行動発現に伴う運動リズムの動的シンクロナイゼーション センモウヒラムシの自由および摂餌行動における変形と移動速度をコンピュータ画像解析した。餌の濃度上昇とともに、ランダムな変動からリミットサイクルへ、さらには周期2のリミットサイクルへと分岐した。このように最も原始的な多細胞生物においても、粘菌における往復リズムの発現と類似した動的な行動制御系が機能していることを明らかにした。
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