研究課題/領域番号 |
11167203
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60282109)
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研究分担者 |
上田 太郎 産業技術総合研究所, ジーンディスカバリー研究センター, 主任研究員 (90356551)
樋口 秀男 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90165093)
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キーワード | 筋肉 / 分子機械 / タンパク分子モーター / タンパク水和 / 分子間情報伝達 / エンタルピーエントロピー補償 / 人工筋肉 |
研究概要 |
本研究では、骨格筋のアクトミオシンにおいて分子間駆動機構をになうアクチンフィラメントの役割を明らかにするため、遺伝子工学的に作成したキメラタンパクを用いた微小運動解析、およびマイクロ波誘電スペクトルによる周囲の水の誘電応答特性測定に基づく解析を行った。 a)アクチンの遺伝子を導入したキメラミオシンの作成 細胞性粘菌により、アクチンの遺伝子をアクチン結合部として知られるミオシンS1dCのループ2に入れキメラミオシンを作成する事に成功した。これまでキメラタンパクは天然のアクチンと重合しフィラメントを形成することを電子顕微鏡により確かめた。またキメラのみのATP分解活性が0.03/sであり、天然のアクチンと重合することで1.3/sまで活性があがり、アクチン側の重合がミオシンのATP分解活性に大きく影響することを見出した。即ちアクトミオシンの運動機構を調べる強力なツールを実現できた。 b)キメラタンパクを含むアクチンフィラメントのATP加水分解時のゆらぎ観察 キメラタンパクを取り込んだアクチンフィラメントはATP加水分解によりエネルギーを消費する。そのときのフィラメントのゆらぎを蛍光顕微鏡を通してビデオ録画して解析を行った。その結果、アクチンフィラメントは速い小刻みなゆらぎを検出した。これは長さ変化が認められないことから高次モード振動とは考えにくい。このことはフィラメントの横方向の拡散係数の増大を示唆する。水構造の変化が起こっている可能性があり興味深い。 c)アクチンフィラメントのマイクロ波誘電測定 高分解誘電スペクトル測定をアクチン水溶液に対して行った。その結果アクチンの周囲にはバルクの水より運動性の高い水が存在することが明らかになった。これは従来の水構造を破壊するとして知られるヨウ素イオン等のふるまいに誘電的性質が類似しており、アクトミオシンの運動機能解明の重要な手がかりになるものと思われる。
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