分子シンクロナイゼーションの時間過程の蛍光法による解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11167211
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 町田 真二郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (20262032)
• キーワード: 分子ミンクロナイゼーション / 時間分解蛍光法 / 液晶 / ナノ秒ダイナミクス / エキシマー発光 / 蛍光異方性比 / 配向 / 相転移

研究概要

我々は、時間分解蛍光法を用いて、液晶系の分子シンクロナイゼーション過程におけるナノ秒ダイナミクスの解明を試みている。具体的には、ネマチック液晶中に蛍光プローブ分子を分散し、(1)エキシマー発光から、並進拡散挙動を、(2)蛍光異方性比から回転拡散挙動を、それぞれ観測し、温度や電場等が分子レベルのナノ秒ダイナミクスに与える影響を考察した。
(1)電場(1000Hz,〜数10kV/cm)や配向処理(ポリイミド膜を両面並行にラビング)の有無によって、エキシマー形成速度に顕著な差はみられなかった。また、以前に測定した温度依存性の結果でも、液晶相一等方相転移点においてエキシマー形成速度に顕著な変化はみられなかった。すなわち、液晶中のナノ秒スケールの並進拡散挙動には、マクロに配向しているかどうかはそれほど顕著な影響を及ぼさないことが示唆された。
(2)液晶のメソゲンよりも長い棒状分子ジフェニルヘキサトリエンの液晶中での回転緩和時間は十数ナノ秒であったが、メソゲンと同程度の長さの分子(ジメチルアミノスチルベンおよびクマリン153)では、回転緩和時間は数ナノ秒であった。ジフェニルヘキサトリエンは、蛍光異方性比が0に収束せず、角度が制限された円錐内で揺動運動していると示唆された。一方、クマリン153は、蛍光異方性比が0に収束し、液晶中で自由回転していることがわかった。クマリン153の蛍光異方性比は、等方相温度では単一指数関数で減衰したのに対し、液晶相温度では数百ピコ秒の早い緩和成分が観測された。

研究成果

• [文献書誌] Y. Tsurutani, S. Machida, K. Horie: "A Light-Induced Change in Choresteric Pitch by Photoracemization of a Chiral Pyrenyl Sulfoxid"Chemistry Letters. 1999. 87-88 (1999)
• [文献書誌] Y. Tsurutani, S. Machida, K. Horie: "Fluorescence and Mechanism of photoinversion Reactions in Solutions of Chiral Darryl Sulfoxides with Various Sizes of Aromatic Rings"J. Photochem. Photobiol. A. 122. 161-168 (1999)
• [文献書誌] T. Ninomiya, S. Machida, K. Horie: "Dynamics of Liquid Crystal at Interface Studies by Attenuated Total Reflection Fluorescence Spectroscopy"Rep. Progr. Polym. Phys. Jpn. 42. 149-152 (1999)
• [文献書誌] K. Yoshii, S. Machida, K. Horie: "Photo-Probe Study of Siloxane Polymers II. Local Structure and Dynamics of MQ-Type Silicon Resin Probed by Fluorescence Depolarization of Perylene"Polym. J.. 32. 37-42 (2000)
• [文献書誌] F. Ishizaki, S. Machida, K. Horie: "Fluorescence Study on Miscibility in Poly (N-vinycarbozole) / (Poly (oxyethylene) Blends"Polym. J.. 32. 62-66 (2000)
• [文献書誌] M. Oya, S. Machida, K. Horie: "Fluorescence Study on a Cyanobiphenyl Liquid-Crystal and Its Physical Gel"Polym. Adv. Tech.. (in press).