研究課題/領域番号 |
11167214
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 将夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (30251440)
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研究分担者 |
楠原 洋之 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (00302612)
鈴木 洋史 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (80206523)
杉山 雄一 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (80090471)
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キーワード | トランスポーター / 胆汁排泄 / 能動輸送 / 基質認識 / 有機アニオン |
研究概要 |
本年度は取り込み側、排泄側トランスポーターの基質認識性の違いを明かとするため、各種有機アニオン(低分子ペプチド、塩酸イリノテカン、メトトレキセート誘導体)の肝輸送を速度論的に解析した。肝初回通過効果の大きいことで知られるエンドセリン拮抗薬を数種類合成し、ラット遊離肝細胞への取り込みを検討したところ、これら一連の化合物がoatp familyによるものと思われる能動輸送を極めて効率よく受けることが明かとなった。血中安定性の向上を目指し、これら有機アニオンにカチオン残基の導入を試みたところ、取り込み効率は若干低下する程度にとどまった一方で、胆管側膜を介する輸送は劇的な低下が見られた。抗癌剤塩酸イリノテカンについても胆管側膜ベシクルを用いて輸送解析を行ったところ、有機アニオンである本化合物が、MRP2(有機アニオントランスポーター)による輸送の親和性は低い一方で、MDR(主に有機カチオンを認識する)によって効率よく輸送されることが明かとなった。MRP2基質である抗癌剤メトトレキセートの誘導体MX-68についても取り込み側と排泄側の輸送機構を検討したところ、MRP2による輸送はメトトレキセートとほとんど同じ効率である一方、取り込み側は少なくとも一部異なる輸送機構を介することが、阻害剤を用いた解析やイオン勾配を変化させた解析がら、示唆された。上のエンドセリン拮抗薬の例とも合わせると、肝トランスポーターのうち取り込み側のものはmultipleな輸送機構からなっており、より多種類の化合物を認識しうることが考えられる。一方で排泄側については今のところMDR1とMRP2が互いに基質認識性を一部共有しながら機能しているものと考えられる。この結論のため、来年度はさらに多くの化合物を用いた解析、遺伝子レベルでの検討が必要と考える。
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