研究概要 |
セルロース・キチン系糖質高分子とコレステロール系脂質誘導体の液晶系について、以下の成果を得た。 1.糖質系高分子液晶の光学機能の制御 (1)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の濃厚水溶液に無機塩を共存させた液晶系について、電場印加によってコレステリック呈色や透明度を定温下で外部制御しうる新しいメカニズムを確立した。 (2)溶媒モノマーの重合架橋によってHPCの液晶ネットワークを得た。浸漬水に共存するイオンのカオトロピック効果によって呈色や透明状態を変える新規機能性膨潤体になることがわかった。 (3)キチン・キトサンを出発物質としてフェニルイソシアネートを用いたフェニルカルバメート化を種々の反応条件で行った。高置換度のキトサンフェニルカルバメートが高極性溶媒中で明確な可視光選択反射を示すコレステリック液晶を形成することがわかった。 2.コレステロール系脂質誘導体および錯体の液晶並びに液晶ガラス (1)フタル酸モノコレステリルエステル(CHP)と直鎖状モノアミン(C_n-amine, n=4-18の偶数)から成る1:1型錯塩の相転移スキームを完成させた。溶融後の冷却過程で、n【greater than or equal】10の錯体はスメクチック液晶ガラスを、n=8の錯体とCHP単体はコレステリック液晶ガラスを、n=6の錯体は無定形ガラスをそれぞれ形成することが判明した。 (2)上記各ガラスのT_g近傍温度におけるagingに伴うエンタルピー緩和現象を解析した(一部は現在も進行中)。今後は、アミノアルキル鎖の炭素数の偶奇性、連結部の化学構造等の効果について考察すると共に、ガラス性液晶ネットワークの情報記録材料としての応用について検討する予定である。
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