研究概要 |
平面フラットディスプレーの開発を目指して、有機Electroluminescent(EL)素子に関する研究が活発にされている。素子駆動中の結晶化を防ぐために、主に非晶性の低分子色素や高分子がEL材料として用いられている。EL素子中の電荷輸送能を考慮すると、非晶性よりも結晶性や液晶性の材料の方が有利であるが、液晶を用いた有機EL素子に関する研究は殆どない。そこで、本研究では電荷輸送能が高いオキサジアゾール環を有する新規液晶分子を設計すると共に、そのキャラクタリゼーションを行った。 新規に合成した(E)-1,3-bis[5-(3,4,5-triptyloxyphenyl)-1,3,4-oxadiazol-2yl]benzene(BTHP-OXD-B),5-(3,4,5-triptyloxyphenyl)-2,2-(1,3,4-bioxadiazol)は60℃および66℃に液晶転移が、また79℃と83℃に等方相への転移が観察された。これの試料をコロナポーリングし、X線回折測定を行ったところ、BTHP-OXD-Bではスプリットした反射がみられ、ティルトしたカラムナー相を形成していることを見いだした。次に、これらの液晶分子の電子輸送性能を評価するため、光電子分光装置によりイオン化ポテンシャルを測定した。これらの液晶分子のイオン化ポテンシャルは6eV程度であり、電子注入層として適していることが判明した。 有機電界発光素子としての特性を評価するために、これらの材料を注入した液晶セルを作製した。パターン化したITO基板上にホール輸送層であるPEDOTをスピンコートし、ラビング処理した後、厚さ1ミクロンのスペーサーを蒸着により作製した。上部電極にはMgAgを蒸着したガラス板を用い、ITO基板と張り合わせてセルを作製した。電子輸送性の液晶材料を毛細管現象を利用してセル中に導入した。偏光顕微鏡による観察により、セル中の液晶はほぼ、モノドメインに近い、モルフォロジーを示した。偏光解消蛍光測定、可視紫外吸収スペクトル測定により、カラムナー層が基板に対して平行に配列していることが判明した。このセルの電界発光特性を評価したところ、大きな二色性が観察された。
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