1.ナマコ(ニセクロナマコ)体壁のキャッチ結合組織から、結合組織の硬さを変えるタンパク質(硬化因子)を抽出した。硬さの測定は0.3Hzのサイン波状の引っ張りひずみを、単離したナマコの結合組織に与え、発生する応力を測定し、応力のピーク値を硬さの指標とした。真皮細片をEGTAを含むCa^<2+>-free海水中で凍結一解凍を繰り返し、遠心した上清を陰イオン交換カラム(HiTrapQ)にかけ、吸着したものをNaCl濃度勾配により溶出した。0.5-0.6Mの画分に硬化作用がみられた。活性画分をゲル濾過(Sephacry1 S-200)し、活性のあった画分をSDS/PAGEにかけCBBで染色すると、主要なバンドは1本のみ(MW34kDa)だった。34kDaタンパク(硬化因子)のN末と、トリプシンで消化した断片2個のアミノ酸配列を決めた。 2.ナマコを硬くするペプチドNGIWYamideを単離し、これの抗体を作成した。抗体でナマコを染色したところ、ナマコの主な神経系である放射神経が染まった。また、真皮中に抗体陽性を示すもの(たぶん神経繊維)が走っているのが確認できた。NGIYWYamideはキャッチ結合組織の硬さを支配している神経ペプチドだと思われる。 3.キャッチ結合組織であるとともに結合組織性収縮を示すウミユリ(トリノアシ)の巻枝における、神経の走行を調べた。巻枝内には神経とBSO細胞の網目状のネットワークが見られた。巻枝の収縮と硬さ変化のコリン作動性支配を調べたところ、アセチルコリンやニコチン様作動薬は硬さを減少させるのみだったが、ムスカリン様作動薬は、高濃度で組織の軟化を、低濃度で組織の収縮を引き起こした。
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