1.ナマコ真皮の動的力学試験をおこない、力学的性質のひずみ依存性とひずみ速度依存性を調べた。真皮は力学的に異なる3つの状態をとることが分かった。標準状態では、平均的な硬さが1MPa、エネルギー損失率は60%で、ひずみ-応力曲線は典型的なJ字曲線を示した。硬い状態では、応力-ひずみ曲線はJ字を示さず、ひずみの小さいところから大きな傾きをもって直線的に立ち上がった。平均的な硬さは3MPaであった。軟らかい状態では、他の状態にはないひずみ依存性がみられた。他の状態では、振動試験の最大ひずみを増加させると、最大応力もそれにともない増加していったが、軟らかい状態では、最大ひずみが限界値(約10%)を超すと、最大応力がひずみとともに急速に減少した。 2.ナマコ体壁の結合組織(真皮)から抽出した真皮を硬くするタンパク質(34kDaタンパク)の生理活性を調べた。このタンパクはカルシウム非依存的に硬さを増大させた。また凍結融解を繰り返して細胞を破壊した真皮にも硬化作用を示したため、これは細胞外成分に直接効果をおよぼすものと結論できる。 3.硬さを制御する神経ペプチドNGIWYamideのペプチドの抗体を作成し染色したところ、ナマコ以外にもヒトデやウニで、放射神経や管足の神経にNGIWYamide抗体陽性反応が見られ、NGIWYamide(10^<-5>M)はこれらの動物の管足の収縮反応を増強した。 4.棘皮動物の結合組織は、硬さを変えるだけではなく、収縮も示すという例を発見した。ウミシダの腕靭帯は、まったく筋肉を含まないにもかかわらず、刺激により収縮を示した。
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