研究概要 |
1.ジアリールエテン着色体の絶対立体配置とCDスペクトル 熱不可逆性フォトクロミズムを示し,耐久性に優れたジアリールエテンの着色体を光学分割し,重原子を合む誘導体として,X線結晶構造解析によって絶対立体配置を決定した。また,各々のエナンチオマーのCDスペクトルを測定した。その結果,CDスペクトルを測定することで,着色体の絶対立体配置が予測できるようになった。 2.(R)-ビナフトール縮合ベンゾフリルフルギドの合成とフォトクロミズム (R)-ビナフトールを酸無水物部のカルボニル基に縮合したフルギド誘導体を合成した。この化合物は,類縁のインドリルフルギド誘導体と同様,ジアステレオ選択的環化反応を起こすことがわかった。また,そのフォトクロミズムに伴って,蛍光のオンオフ(着色体のみが蛍光発光する),ネマティック液晶にドープしたときにコレステリック液晶相を誘起し,そのピッチを光照射で可逆的に変化させること,を明らかにした。 3.コレステリック液晶の選択反射波長の可逆的制御 上記ベンゾフリルフルギドと,ネマティック液晶,およびコレステリルエステルの混合物に光を照射することで,選択反射の波長が可逆的に変化した。反射色は,赤から青まで連続的に変化した。また,部分的に光をあてることで,パターン形成が可能であった。 4.ビスチエニルフルギドのフォトクロミズム ビス(チエニルエチリデン)無水コハク酸を,Pd触媒を用いるアセチレンジオールのカルボニル化法で合成した。この化合物は,各々のチエニルエチリデン部位の幾何異性のために,3種の無色体と,2種の着色体が存在する。そのフォトクロミズムを明らかにし,(E,E)の無色体から生成する着色体が優勢に生成することを示した。さらにその理由を分子軌道計算により明らかにした。
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