研究概要 |
本年度は,特定温度領域と酵素とがシンクロナイズして初めて分解が進行するヒドロゲルの設計を目指し,ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)をグラフトしたデキストラン(DEX-g-PNIPAAm)とPNIPAAm架橋マトリックスからなる相互進入網目(IPN)ヒドロゲルの合成とその分解特性について検討した。さらには,超分子(ポリロタキサン)に担持した多数のリガンドが細胞表面の結合タンパク質と多価的に相互作用して,結合タンパク質とリガンドとの特異的な相互作用が増強するシステムについても検討した。 1:特定温度領域で分解するデキストラン-温度応答性高分子ヒドロゲルの設計 DEX-g-PNIPAAm存在下,NIPAAm,架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド、レドックス開始剤として過硫酸アンモニウムをそれぞれ用いてIPNヒドロゲルを調製した。DEX-g-PNIPAAm及びヒドロゲルマトリックスの下限臨界溶液温度(LCST)は、それぞれ約32℃(T1)、38℃(T2)と算出された。T1以下(30℃)、T1以上T2以下(35℃)、T2以上(40℃)でのIPNヒドロゲルの酵素分解挙動を解析したところ,30℃では重量が変化しなかったが、35℃では重量が減少し、40℃では重量減少が抑制されるようになった。以上より、2つのLCSTに挟まれた特定温度域において酵素分解が進行する機能設計が可能であることを示すことができた。 2:ビオチン-ポリロタキサン結合体の合成とストレプトアビジンとの多価相互作用の解析 ビオチン導入ポリロタキサンは、α-シクロデキストリン(α-CD)水酸基をカルボニルジイミダゾールを用いて活性化し、ヒドラジド化ビオチンと反応させて調製した。この結合体とストレプトアビジン(SA)との相互作用を表面プラズモン共鳴装置を用いて解析したところ,ポリロタキサンに導入したビオチン数が大きくなるにつれて,擬1次反応と仮定した見かけの解離結合定数は10^<-3>びから10^<-5>オーダーにまで低下した。このことは,ビオチン導入数の増加によってSA被覆表面から解離しにくくなっていることを示しており,多価相互作用を示唆していた。
|