研究課題/領域番号 |
11167246
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
垣内 隆 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135552)
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研究分担者 |
保原 大介 京都大学, 工学研究科, 助手 (60303864)
山本 雅博 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60182648)
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キーワード | なだれ型移動 / イオン移動 / 液液界面 / エマルション / AOT / スパイク / マラゴニ効果 / W / Oエマルション |
研究概要 |
これまでの油水界面の研究で偶然に見いだしたエマルション粒子の油水界面へのなだれ的融合を、より明確な実験条件下で起こさせるための実験系の確率を試みてた。まず、界面活性剤としてAerosol-OT(AOT,dioctyl sodium sulphosuccinate)を用い、分極性界面近傍にいくつかの方法でエマルションを形成し、融合条件を検討した。AOTを溶かしたジクロルエタン(DCE)をLiCl水溶液を接触させると、界面のDCE相側が徐々に白濁してくる。これはW/O型のエマルションが形成されることによるものである。Na+は十分に親水性であるので、実験に用いた電位領域では、常に水相側に移行するはずである。実際、界面を形成した後しばらくはNa+の移動による電流が観察されるが、数分後には、突然、電流が流れなくなる。そのあと、電位を一定に保ちながら、あるいは掃引しながら電流を観察すると、半値幅300ms程度のスパイク状の電流が観察された。支持電解質としてDCE相はテトラペンチルアンモニウムテトラフェニルボレートを、W相はLiClを含むが、分極範囲ではこれらのイオンの界面を横切る移動は無視できるので、観察されたスパイク状電流はNa+イオンの一過的な移動を示すものと考えられる。スパイクの発生は、不規則であり、界面のDCE側のエマルションがなくなると発生しなくなる。この現象は、1)本来流れるべきNa+の移動が休止するないし阻止されること、2)スパイク発生としてランダムかつ一過的に復活するという点で奇妙であり、後者はさらに、a.形状が非対称で、シャープな立ち上がりと緩やかな減少を示すこと、b.この減少は拡散律速の電流の減少から予測されるよりもはるかに急であること、c.スパイクの電気量は個々のエマルション粒子の界面への融合から予想されるよりはるかに大きいこと、d.多くの場合、スパイクの高さが一定値を示すこと、などの興味深い特徴を有する。界面を観察すると、DCE相側に生成した雲状のエマルションが流動しており、溶液全体の対流が認められた。この流動は、界面にたいして垂直方向のみならず、界面に平行な方向にも生じており、界面張力の不均一性によるマラゴニ効果が大きく寄与しているようである。
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