膜外からのシグナルを感知する配列や原子団を導入したイオンチャネルペプチドを用いれば、膜外刺激に呼応した膜電流制御システムを開発することが期待できる。本研究では、新しいタイプの情報変換・情報伝達システムの創出を目指し、金属やリガンドとの結合によりチャネル分子の会合状態や開口の調節を試みた。 膜内でランダムに会合し、通常一定の会合数を示さないイオンチャネルペプチド、アラメチシンに、膜外配列として、癌関連タンパク質Fos由来のロイシンジッパー、あるいは、へリックス構造をとらない膜外配列として、GCN4由来ロイシンジッパー中のロイシンをグリシンに置換した誘導体を合成した。これらのチャネル活性の検討から、膜外配列のへリックス構造の有無によりチャネル電流も変化しうること、また、膜外の相互認識の他、膜外配列間の立体障害も会合調節に重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、アラメチシン-GCN4ロイシンジッパー四量体分子を合成したところ、会合数が一定でもコンホメーション等の違いにより、複数レベルの単一チャネル電流値を与え得ることがわかった。 次に、外部刺激に呼応した構造変化が期待できる膜外配列のモデルとして、前述のFos由来のロイシンジッパー配列を取り上げ、Fosと水中で安定なヘテロ二量体を形成するJun由来ペプチドとの相互作用がチャネル電流に反映されるかの検討を行った。また、アラメチシンのC末端側にGlyHis配列を導入したペプチドを合成し、チャネル電流のCu^<2+>による調節を検討した。しかし、単一チャネルレベルではこれらの刺激に対しての影響はほとんど見られなかったので、現在、個々のチャネル電流の総和としてのマクロスコピックな膜電流に対して膜外配列が及ぼす影響について検討するとともに、さらに大きな結合定数を持つ相互作用モチーフを用いてのチャネルペプチドの開口調節を検討中である。
|