研究概要 |
申請者らは、ATP合成酵素のサブユニットの各mRNA量の絶対量を測定する方法を開発し、FischerラットF344/DuCrjの種々の組織におけるATP合成酵素のサブユニット9種(サブユニットb,c(P1),c(P2),d,e,F6,IF1,OSCP,beta-subunit)のmRNA量の絶対量を定量した。その結果、大部分のサブユニットは、心臓で最も多く発現し、ついで、腎臓で多く、脳と肝臓では少ないという組織特異性を示した。このように、各サブユニットのmRNA量は組織で大きく異なるにもかかわらず、驚いたことに、それらの発現量をモル%で表すと、いずれの組織でも各サブユニットのmRNAは一定の化学量論比からなる発現パターンを示すことが明らかとなった。また、この発現パターンは、週齢差によっても変動しないことを明らかにした。この事実は、各サブユニットの遺伝子発現が、シンクロナイズして起こっていることを示しており、これらを制御するシンクロナイザーの存在が強く示唆された。また、この分子シンクロナイゼイション機構(装置)は、調べた全ての組織にあること、そして週齢差によっても変動しないことをはじめて明らかにした。 さらに、本研究では、心筋細胞においてミトコンドリアが異常に増殖しているJVS(juvenile visceral steatosis)マウスを用いて、転写レベルにおけるATP合成酵素サブユニットの発現量の解析を行うと共に、蛍光Differential Display法により、ミトコンドリアの増殖を制御している因子の解析を行った。その結果、ミトコンドリア増殖の制御機構への関与が期待される15種のcDNAを得ることに成功しており、現在、それらの遺伝子の全構造の決定と機能の解析を行なっている。
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