研究課題/領域番号 |
11167262
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 瑞夫 九州大学, 工学研究科, 教授 (10165657)
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研究分担者 |
村田 正治 九州大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30304744)
片山 佳樹 九州大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (70284528)
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キーワード | DNAコンジュゲート / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / ソラレン / グラフト共重合 / 制限酵素 / DNA切断 |
研究概要 |
本研究では生体システムを手本に「人工的」遺伝情報制御システムの構築を試みる。本年度はその第一段階としてDNAとDNA/感熱性高分子とのブロック型複合体を合成し、温度刺激による制限酵素の切断制御について検討した。 代表的な感熱性高分子であるPNIPAAm片末端をソラレン化し、二重鎖DNA(pBluescriptII由来の直鎖状DNA,2949bp)との光反応によりDNA/PNIPAAm複合体を得た。一方、Hind IIIで消化したpBR322を脱リン酸化処理した後、再びEcoRIで消化し、得られた4332bpの直鎖状DNAをアガロースゲル電気泳動によって分離・精製した。これを先のDNA/PNIPAAm複合体と両者のEcoRIサイトで連結し、ABブロック型複合体を得た。 上記のABブロック型複合体を反応緩衝液中で25℃あるいは37℃で1次関するインキュベートした後、0.02Uの制限酵素EcoRIを加え更に10分〜60分間インキュベートした。所定の時間が経過したところで消化反応を停止させ、各サンプルを1wt%アガロースゲル電気泳動法により分析した。この結果、PNIPAAmの相転移温度を超える37℃でインキュベートした際の切断効率が、60分後の時点においても10%に満たないに対して、25℃での切断効率はその4倍に達することが明らかとなった。EcoRIの切断活性は37℃で最大となるため、25℃での消化は酵素活性の面ではむしろ不利な条件となる。恐らくブロック型複合体の感熱性ドメイン(DNA/PNIPAAm複合体)が熱刺激によりグロビュール化し(DNA鎖の収縮)、ネイティブDNAへ何らかの摂動を与えたよって、結果的に制限酵素のDNA認識配列への結合を低下させたものと考えられる。以上の結果は、温度変化という外部刺激にシンクロナイズさせて人工的に遺伝子機能を制御できることを示唆している。
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