本研究課題では、高効率で駆動する人工光合成型光電変換システムの構築を目指し、傾斜電気化学ポテンシャル構造を持つ光同調性電子リレーユニットを電極上に固定化した光電変換システムの開発を行った。成果を以下にまとめる。 1.ルテニウムトリスビピリジン錯体(Ru錯体)とビオローゲン(V)のチオール誘導体を合成し、その混合物溶液に電極を浸し、自己組織化により混合単分子膜を電極上に構築した。Ru錯体に対し、Vが数倍存在すると、光電流効果の向上が認められた。 2.Ru錯体:V=1:2の連結チオール誘導体を合成し、同様の方法で単分子膜を電極上に構成した。Ru錯体:V=1:1の連結チオール誘導体から得られる単分子膜と比較すると、Ru錯体あたりの光電流効率は1:2連結体の方が2倍程度高いことが明らかとなった。隣接するV間での電子核酸効果によるものであることが明らかとなった。 3.Ru錯体とVのかわりに、ポルフィリンとフラーレンを用いた系についても検討を行った。この場合には、自己組織化法と表面ゾルーゲル法を用いて積層型分子膜を構築した。ポルフィリンの光励起による光電流がフラーレンの存在で増強されることを明らかにした。簡便な同調型光電変換膜の作製法を提案したことになる。 4.光電流の絶対強度をかせぐために、Ru錯体を金微粒子表面に結合させたものを電極上に固定化する方法を開発した。構造と光電流の測定を検討しつつある。
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