最近、光学活性で且つ感温性を有する新規材料を合成し、その相転移挙動について検討している。すなわち、1ユニット内の側鎖に水酸基を含む光学活性なN-(l)-(1-hydroxymethyl)-propylmethacrylamide (l-HMPMA) である。本報告では、このポリマーの相転移挙動について、光学不活性なP(dl-HMPMA)と比較して議論する。 本研究で新規に合成したP(HMPMA)は、光学活性、不活性にかかわらず水中でLower Critical Solution Temperature (LCST) 型の相転移挙動を示す。全く新しい感温性高分子であることがわかった。しかし、その挙動は、光学活性なP(l-HMPMA)と光学不活性であるP(dl-HMPMA)とでは、大きく異なっていた。P(l-HMPMA)の相転移挙動が、P(dl-HMPMA)のそれより低温側で観察され、さらに昇温時と降温時で相転移にヒステリシスが存在していた。また、光学不活性なP(dl-HMPMA)は、相転移温度以上でコアセルベートを形成し、固体沈殿は生成しなかった。すなわち、ポリマー自身の相転移挙動が、光学活性基により影響を受けた全く新しい感温性ポリマーであるといえる。さらに、これらのモノマーからなるハイドロゲルの膨潤度変化の温度依存性を測定すると、ポリマー水溶液の透過率変化と同様に、P(l-HMPMA)の相転移挙動が、P(dl-HMPMA)のそれより低温側で起こり、温度変化に対するヒステリシスも示した。その一方で、P(dl-HMPMA)はヒステリシスを全く示さない膨潤度変化を示した。さらに、P(l-HMPMA)とP(dl-HMPMA)は、収縮時のハイドロゲルがそれぞれ白濁と透明であり、収縮した状態での水和状態が異なっていることもわかった。
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