本研究では、官能基を多数導入しても鋭敏な温度応答挙動を発現するハイドロゲルを合成し、その評価ならぴに応用展開を図る。イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)と2-カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)からなるハイドロゲルをメチレンビスアクリルアミドを架橋剤として合成した。アクリル酸(AAc)を共重合成分とするゲルでは、わずか数mol%のアクリル酸が導入されると、相転移温度以下で平衡膨潤度は増加し、体積相転移温度は高温側にシフトした。含量を5mol%以上にすると相転移温度以上に加温しても明確な相転移は消失した。一方、CIPAAmを有するハイドロゲルでは、カルボキシル基が20mol%含んでいても、ホモポリマーと同様に相転移を示した。この現象はポリマーの場合と同様に、Ph値やイオン強度を変化させても、ホモポリマーから構成されるハイドロゲルと同じ挙動であった。これは、CIPAAmの化学構造が極めてIPAAmと類似しているために、連続的なイソプロピルアミド基の連続性が維持され、結果として相転移の際の脱水和がカルボキシル基の存在に影響を受けず、高い凝集力を発現したためであると考えられた。 IPAAm-co-AAcとIPAAm-co-CIPAAmからなるハイドロゲルを10。Cから40。Cに加温したときのゲルの体積変化挙動を調べたところ、アクリル酸が3mol%まで含有するゲルではゲル表面にスキン構造が形成されずに加速的に収縮した。しかしそれ以上の含率ではゲルの収縮は逆に遅くなった。一方、IPAAm-co-CIPAAmのゲルでは、CIPAAm含量が少ないと、ホモポリマーと同様に表面にスキン層が形成されて、収縮は停止した。さらにCIPAAm含量を増加させると、ゲルは加速的に収縮した。このゲルの加速的な収縮のメカニズムについては、カルボキシル基の解離によるイオン浸透圧のために生じる膨潤と疎水性相互作用による収縮が釣り合った準安定状態が、急激な脱水和により一気に収縮するためてあると考えられた。
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