研究概要 |
肝細胞における細胞接着と細胞増殖、アポトーシスとの関係を明らかにする目的で、できるだけ単純化したシステムを構築するため、PVLA(poly-N-vinylbenzil-β-D-lactanamide)分子をポリスチレンデイッシュ上に固相化しこの上で、細胞を成育させることとした。PVLAはアシアロ糖蛋白受容体と特異的に結合することが既に明らかになっているが、細胞接着に関する報告はない。PVLA濃度を1ug/ml,100ug/mlに設定レ、この上に継代肝癌細胞HuH7を成育させ、細胞数の増加を経時的に測定した。コントロールとして1%BSA(仔牛血清)でデイッシュ表面をブロッキングしたものを用いた。細胞が接着しなければ、増殖抑制が生ずるとの仮説を証明するためにこの実験を設定したが、肝癌細胞は1%BSA存在下では最初の増殖過程こそ緩徐であったが、その後通常の培養条件のものとほぼ同一の増殖曲線を呈した。PVLA下でも同様であった、これは肝癌細胞では細胞接着が増殖には必須ではなく、anchorage independent growthを行う事を示している。次に、不死化しているが形質転換しているラツト肝細胞株を使用し同様な実験を行った。この場合には、1%BSA存在下で細胞は浮遊し、48時間後には殆どの細胞は死滅してしまった。一方PVLA存在下では10%ほどの細胞が接着しこれは通常の増殖速度で増加した。残り90%は死滅していた。これら浮遊細胞の核をPI染色し、FACSで解析するとsubG1期の細胞が12時間より出現しており、アポトーシスにより細胞が死滅していることが判明した。さらに現在初代肝細胞にても同様なことが観察されるか検討中である。
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