研究概要 |
分子モーター1分子計測 : この数年来、レーザー光ピンセット法を用いてアクチン・ミオシン、微小管・キネシンの滑り力、結合破断力、それに結合寿命に対する負荷依存性、破断力分布に対する負荷上昇速度依存性などを調べている。その結果、破断力分布は約7pNと約15pNとにピークがあり、一方単頭ミオシンの破断力分布のピークは1つで、しかもその平均値は7pNであることから、それぞれ単頭結合に対応すること、そして単頭結合と双頭結合の間に平衡関係が存在することが裏付けられた。微小管・キシネンの場合には、硬直結合(ATP非存在下での結合)ではその平衡は単頭結合側に傾いており、AMP-PNP存在下では双頭結合側に傾いていた。キシネン分子の弾性率が1分子計測され、単頭結合では約0.4pN/nm、双頭結合では約0.8pN/nmと見積もられた。また、単頭結合から双頭結合への変換速度が0.3/sと見積もられた。これらの結果、キシネン分子モーターの運動機構の一端が明らかになった。心筋SPOC(自励収縮振動) : Rhodamine-phalloidinラベルしたグリセリン処理心筋線維束を用いて、ADP-SPOC溶液(41mM KCI,14.2mM MgCl2,2.2mM ATP,16.4mM ADP,10mM Pi,10mM MOPS(pH7.0)、2mM EGTA,0.1mM AP5A,150mM Ionic Strength,1mM DTT,酸素除去酵素系)中でSPOC現象を誘起した。ウシ、ブタ、ウサギの筋節長振動周期を計測した結果、ウシでは20.8±1.4 s、ブタでは16.7±2.6 s、ウサギでは7.9±2.4 s(それぞれ平均値±SD、n=5)となり、その心筋の由来する動物種の心拍数と強い相関を示した。このことは、ペースメーカー細胞からの電気パルスによる心拍の制御に加えて、心筋収縮系自体が(SPOC)自励振動系をなし、心臓が血液を効率よく送り出すためのポンプとして最適に機能するように構成されていることを示唆している。
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