昨年度までの解析で、GAL4-UAS-WGAシステムによって発現したWGAは複眼視細胞からLニューロンへ効率よく輸送され、神経回路の解析に有効であると思われた。脊椎動物の神経束でもこの系は有効であった。しかし、その後の検討により、残念ながらショウジョウバエの神経系ではグリア細胞の被覆がしっかりしているところ以外では、マーカーが拡散してしまい、WGAを用いた神経回路の解析は期待できないことがわかった。そこで、神経回路の解析は一端中止し、特定の神経終末をGFPまたはCD8::GFPで標識する方法を検討することにした。NPコンソーシアムにより確立したGAL4系統のうちラミナで発現していると思われるものを提供していただき、UAS-GFPまたは、UAS-CD8::GFPの系統とかけあわせを行い、発現細胞の同定の準備中である。またこれらの解剖学的解析に加え、シナプスに機能分子が局在するメカニズムに関して、視細胞をモデル系にして検討した。シナプスでは、イオンチャンネルやシグナル伝達系の蛋白質がPDZ蛋白質によって複合体を形成し、情報伝達が効率よく行われることが知られている。しかし、これらの機能分子がPDZ蛋白質とシナプスに共局在する機構はよくわかっていない。視細胞ではPDZドメインを5個持つINAD蛋白質が、光受容部においてTRPイオンチャンネル、PKC(INAC)及びPLC(NORPA)といった、光情報変換過程の核となる蛋白質と結合し、情報変換複合体を形成している。そこで、INAD複合体が光受容部に局在するメカニズムを解析した。蛋白結合部位に変異のあるINADを発現する変異体を作製し、INAD複合体構成蛋白質の局在を免疫染色によって調べたところ、INAD複合体の光受容部への輸送には複数の経路があることがわかった。
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