研究概要 |
現状の技術でカイコガの行動発現メカニズムを分析するには,行動の支障とならないような微小なテレメータで,触角電位や筋電位を送信して生理学的なデータを得,同時に行動をカメラで観察して解析するのが有効であると考えられる.しかし,触角電位については,触角からの信号が微弱なために,入力インピーダンスの高いテレメータが必要であり,筋電位計測用の(EMG用)テレメータをそのまま使っても触角電位は計測できない.また,EMG用テレメータはFM放送の周波数帯を利用しているので,低周波の波である触角電位を送信することができない欠点がある.そこで、本研究ではEMG用テレメータを改良してEAG用テレメータを試作し、これを使ってカイコガの触角電位を計測した. EMG用テレメータは100Hz以下で周波数応答のゲインが急速に低下していたのに対して,EAG用テレメータでは1〜10Hzの間で一定の大きなゲインが得られるように設計されている.また,EAG用テレメータの入力インピーダンスも、使用する周波数帯で500KWの入力インピーダンスが確保されている. EAG用テレメータを使って,カイコガの触角電位の計測結果である.カイコガの触角に電極を挿入し,そこからの信号をテレメータで発信して記録した.EAGの記録は複数の神経細胞の活動の集まりを統計的に見たものと考えられ,個々の神経細胞の活動の周波数帯の信号より,周波数の低い部分に意味のある信号が出ているが,これを,本研究のテレメータで計測可能であることが示せた.
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