カイコガの神経修飾物質の濃度変化を微分方程式で記述したものと、膜電位の変化を表す微分方程式で、神経モデルを記述した。単発的な刺激に対して、ジグザグ、ターンの行動が神経の伝達速度よりかなりゆっくりした変化であるが、この原因として化学物質の緩やかな変化も重要な要素であることを仮定したものである。これによって、実際のカイコガの脳内で見られる生理学的データに似たモデルを作ることができた。さらに、このモデルを小型移動機械にインプリメントして、フェロモンを流した風洞内で実験を行った。カイコガの脳内の神経モデルについて、分析的なデータをもとに、数式モデルを作るための作業が、当初の予定より時間のかかる仕事となったが、以前にわれわれが提案したものより、分析データからの情報が組み込まれたモデルとなったと考えている。今後、このモデルの評価と改良が必要である。 また、昆虫の逃避行動の際の脚の運びは、典型的なパターンを示し、外部からビデオカメラを使って観察してデータをとることが可能である。カイコガの場合に、行動から神経モデルを予測し、解剖学的に意味のありそうな結果を得ているが、この手法をアリの逃避行動に適用して、その神経ネットワークを推定することを行っている。アリを刺激して引き起こされる逃避行動をビデオにとる。脚の動きを、いわゆる状態遷移図として表す。この状態遷移を電子回路の順序回路としてあらわし、さらにそれを、神経ネットワークとして書き換えることによって、アリの逃避行動の際の神経ネットワークを推定することを試みている。現在、アリを用いて、歩行方向を急に変えるときの足運びについてデータをとった。行動から脳のプログラムを推定するときの規則性について、検討している。
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