本年度の研究では、通年を通して手に入れやすくかつ飛行特性に優れたマルハナバチを主として用い、自由飛行中のマヌーバ飛行を高速度ビデオカメラ(コダックHS4340)を用いて観測し、特定の回転運動や飛行運動を可能にする翼運動を特定することを試みた。 従来の研究では、左右対称の運動のみが明らかにされていたが、本研究により初めて左右非対称の飛行運動のメカニズムが解明された。すなわち、翼の運動の非対称性は、主に翅を最も引き上げた位置(Pronation時)に生じ、これは従来、解剖学的に得られた知見であるはばたき運動の振幅は最も打ち下ろした位置(Supination時)に翼の下部と胴体側のストッパーの位置関係で制御される、という仮説とは相反するものであるが、これまで行われた翅の運動の観察結果や流体力学的研究とはよく一致している。またマルハナバチのように左右の翅が背中のクチクラで結合された関節飛翔筋の構造でも、かなりの非対称運動が実現可能なことが明らかになった。
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