研究概要 |
コオロギ左右の視葉概日時計間の相互同調系における色素拡散ホルモン様ペプチド(PDF)性ニューロンおよびセロトニン性ニューロンの役割を明らかにする目的で,神経生物学的実験を行い,以下の結果を得た. 1.セロトニンは視葉内微量投与で誌髄両側性ニューロン群(MBN)の光応答を抑制するが、セロトニンと同様の効果はフォルスコリンで得られること,8-OH-DPATでも得られることなどから,この系には5-HT_7類似のリセプターが関与することが示唆された.2.昨年度作成した合成PDFの視葉内微量投与ではMBNの光応答は昼には増強され,夜には幾分抑制された。3.PDFの視葉内微量投与により,活動リズムの位相変位が惹起されたが,その位相反応曲線は主観的昼の後半から夜の前半で位相前進を,夜の後半から昼の前半で位相後退を示し,セロトニンとは異なるものであった.4.PDFを昼視葉内に微量投与しMBNの感度を上昇させた後,セロトニンを微量投与すると,MBN感度は急激に低下した.6.PDFmRNAのアンチセンスオリゴの投与で、主観的昼の後半では位相後退が、夜の後半では位相前進が起こり、PDFが時計機構に直接関与する可能牲が示唆された. 以上の結果から,1)昼には,概日時計の制御の下に分泌されたセロトニンがMBNの感度を低下させ,同調系の昼の状態を設定し,時計間同調を安定化させること、一方,2)PDFは昼の後半に分泌され,MBN感度を上昇させ同調系の夜の状態を作ることに関与するとともに,概日時計の位相を夜の開始に一致させるよう位相前進させる作用を持つことが示唆された.
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