アメラフランの鰓を支配する神経系は中枢神経系の一部である腹部神経節と、鰓に内在する末梢神経である鰓神経節、およびごく末梢の"神経集網"の3段階から成り、神経系の階層的構築のモデルとみなせる。本研究では、末梢神経系のニューロン構築を免疫細胞化学的に調べ、鰓運動の神経制御における中枢神経系と末梢神経系との連関を電気生理学的に単一ニューロンレベルで解析した。 従来、アメフラシの鰓の運動は腹部神経節で同定されているL7などの運動ニューロンの出力を中枢内で制御することで調節されると考えられてきた。しかし、我々が新たに腹部神経節で発見、同定したニューロン、Anti-L7はL7のインパルス活動に影響せずにL7が惹起する鰓運動を抑制した。このことは、Anti-L7による抑制作用機構が末梢に存在することを示唆する。神経ヘプチドSmall Cardioactive Peptide B(SCP_B)が鰓運動に抑制作用を持つことが知られているがAnti-L7自身はSCP_B作動性ではないことを抗SCP_Bモノクロナール抗体により免疫細胞化学的に確かめた。一方、鰓末梢神経系においてSCP_B様免疫陽性反応の分布を調べたところ、鰓血管筋肉節束間で多数の免疫陽性ニューロンのクラスターを観察した。これらの末消ニューロンの活動を細胞外誘導により記録することに成功した。Anti-L7と末梢ニューロンとの同時誘導により、Anti-L7の活動により興奮する末梢ニューロンを発見した。これらのことから、Anti-L7の抑制作用にはSCP_B様物質含有の末梢ニューロンが介在すると推測された。
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