ショウジョウバエには神経回路の形成や神経細胞の生理機能に異常を起こす突然変異体が多数知られているが、個体での電気生理学実験が非常に難しく詳細な情報処理過程の研究はほとんど手つかずである。近年になってGFP(Green Fluorescent Protein)に様々な修飾を加えたタンパクを用いて細胞活動を計る試みがなされるようになってきたので、これらを用いてショウジョウバエの神経活動を計測するシステム作成を試みることとした。 カルシウム依存的にスペクトルの変化が起きることが報告されているyellow Cameleon2(YC2)分子の特性を調べるために、培養細胞での発現実験を行った(東京大学大学院川戸研究室との共同研究)。YC2を哺乳類培養細胞で発現して、落射蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、明瞭な蛍光が安定して検出された。培養液中にカルシウムイオノフォアを加え、細胞内カルシウム濃度を大きく上昇させたところ、蛍光強度の変化が観察された。従って少なくとも大きなカルシウム濃度に応じたYC2の蛍光変化は検出できることがわかった。さらにショウジョウバエへの遺伝子導入を行った(基礎生物学研究所伊藤博士、生理学研究所宍戸・中井博士との共同研究)。yellow Cameleon-2遺伝子を、ショウジョウバエに導入して様々な細胞特異的な発現をおこすことのできるpUASTベクターに導入した。伊藤博士、宍戸博士らと共同でショウジョウバエに導入した。十分明るい蛍光が確認でき、期待されるスペクトル変化があれば検出できる可能性が高いことが分かった。 今後は修飾GFPタンパクをショウジョウバエ外部感覚器や脳などで発現させて刺激を行い、細胞活動の検出に十分な感度が得られるか否か調べる。またの脳での細胞活動計測に有用な光学系の検討を行う。
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