研究概要 |
リボソームmRNAの塩基配列に従ってポリペプチド鎖を正確に伸長して蛋白質を合成する細胞内小器官である.しばしば,細胞内の工場に例えられる通り,遺伝暗号解読,ペプチジルトランスフェラーゼ活性,トランスロケーションなど,蛋白質合成に伴う複雑な仕事を整然と遂行している.生命活動に重要な反応のほとんどすべては蛋白質が担っており,情報分子である核酸の塩基配列から機能分子である蛋白質のアミノ酸配列への正確な翻訳は,地球上のあらゆる生物にとって極めて重要かつ基本的なプロセスである.本研究では,リポソームおよびリボソームの構成成分を単離・精製・結晶化し,その立体構造解析を行ない,蛋白質合成の機構(翻訳機構)を原子の分解能で解明することを目的としている.この研究目的に従い,本年度は次の項目について研究を進めた. 1.遺伝子暗号解読センターを構成する蛋白質と16S rRNAの結合部位との複合体結晶の調製:遺伝子暗号解読センターは16S rRNAを中心に,数種のリボソーム蛋白質で構成されている.平成11年度には,これらの蛋白質の内,S3,S9,S19の大量発現系を構築した.また,16S rRNAのフラグメント(926-986/1219-1393)をT7 RNA polymeraseを用いた転写系によって,大量に調製し,ハンギングドロップ法,マイクロバッチ法により複合体の結晶化を条件を検索した. 2.ペプチジルトランスフェラーゼ活性センターを構成する蛋白質と23S rRNAの結合部位との複合体結晶の調製:ペプチジルトランスフェラーゼ活性センターは23S rRNAを中心に,数種の蛋白質で構成されている.平成11年度には,これらの蛋白質の内,L5蛋白質の構造解析を行った. 3.リボソーム顆粒の結晶化:超高度好熱古細菌Aeropyrumpernixと高度好熱真性細菌Phodothermus obamensisを培養してリボソームを精製し,結晶化を試みた.
|