研究概要 |
リボソームはmRNAの塩基配列に従ってポリペプチド鎖を正確に伸長して蛋白質を合成する細胞内小器官である.しばしば,細胞内の工場に例えられる通り,遺伝暗号解読,ペプチジルトランスフェラーゼ活性,トランスロケーションなど,蛋白質合成に伴う複雑な仕事を整然と遂行している.生命活動に重要な化学反応のほとんどすべては蛋白質が担っており,情報分子である核酸の塩基配列から機能分子である蛋白質のアミノ酸配列への正確な翻訳は,地球上のあらゆる生物にとって極めて重要かつ基本的なプロセスである.本研究では,リボソームおよびリボソームの構成成分を単離・精製・結晶化しその立体構造解析を行ない,蛋白質合成の機構(翻訳機構)を原子の分解能で解明することを目的としている.この研究目的に従い,本年度は次の項目について研究を進めた1.遺伝暗号解読センターを構成する蛋白質の構造解析:遺伝子暗号解読センターは16SrRNAを中心に,数種のリボソーム蛋白質で構成されている.平成12年度には,これらの蛋白質のいくつかの精製を行い結晶化条件を検討した.特に,Pyrococcus Horikoshii由来のS7について結晶化に成功し,Nativeのデータの収集を行うことができた.2.ペプチジルトランスフェラーゼ活性センターを構成する蛋白質と23SrRNAの結合部位との複合体結晶の調製:ペプチジルトランスフェラーゼ活性センターは23SrRNAを中心に,数種の蛋白質で構成されている.平成12年度には,これらの蛋白質の内,Pyrococcus Horikoshii由来L13の構造解析を行い.L5-RNA複合体の結晶について,データを収集した.また,S10オペロンのmRNAのL4結合部位について調べた.一方,昨年度に構造解析に成功したL5については,RNA誌に投稿し,現在印刷中にある.
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