研究概要 |
リボソームタンパク質S7は30Sサブユニットのヘッドを構成するタンパク質である.16S rRNAの3'大ドメインと結合することによって,30Sサブユニットのヘッド領域の初期会合において中心的役割を果たす.また,Eサイトに結合したtRNAとコンタクトする位置にあり,遺伝暗号解読部位に唯一存在するタンパク質であり,遺伝暗号解読にも何らかの役割を果たしていることが期待されている.本年度の研究では,超高度好熱古細菌Pyrococcus horikoshii由来リボソームタンパク質S7の立体構造を2.1Åで解析した.私たちは先に真正細菌Bacillus stearothermophilus由来リボソームタンパク質S7の構造を決定しているが,S7は,5本のヘリックスからなる疎水コアドメインと,その疎水コアドメインから突き出たβアームからなる構造をとっている.真正細菌由来S7と比べて古細菌S7ではN末の領域が約50残基長く,またrRNA結合ループに挿入があることなど,構造上の重要な違いが存在する.真正細菌と一次構造の保存性がないN末(1-65残基)のうち,18-42残基はαヘリックスが形成する疎水コアと疎水コンタクトを保ち,疎水コアーの安定化に寄与すること,44-62残基はフレキシブルな構造をとることが示された.また,両タンパク質と70Sリボソームの構造を重ね合わせることで,真正細菌由来S7と古細菌由来S7とのrRNA結合様式の違いを明らかにし,リボソームの進化とタンパク質の役割について重要な知見を得た.
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