発光細菌の発光反応関連酵素群のX線結晶構造解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11169206
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 田之倉 優 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60136786)
• 研究分担者: 永田 宏次 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助手 (30280788) ; 佐々木 宏 大分医科大学, 医学部, 助手 (80272467)
• キーワード: 発光細菌 / 発光反応 / 発光関連酵素 / フラビン還元酵素 / X線結晶構造解析

研究概要

発光細菌Photobacterium(Vibrio)fischeriの発光系は発光反応を直接触媒するルシフェラーゼと、そのルシフェラーゼに発光基質である還元型FMNと飽和長鎖脂肪族アルデヒドを供給する共役系酵素(FMN還元酵素FRaseI及び脂肪酸還元酵素)から成る。ルシフェラーゼとFMN還元酵素間の直接相互作用の証拠が見い出されており、バクテリア発光は発光現象自体も興味深いが、酵素反応としても共役系を含めた一つの非常に効率の良い反応系として機能し大変興味深い。また、FRaseIとアミノ酸配列上相同性が高いものの機能が明確に異なる酵素として大腸菌のニトロ還元酵素NfsBがある。大腸菌はニトロ還元酵素としてNfsBに加えてNfsAも有する。われわれは既に、FRaseIの結晶構造解析を1.8Å分解能で行い、NfsAとNfsBの結晶を得ている。本研究では、これらの酵素群のX線結晶構造解析を酵素反応速度解析とともに行ない、酵素群の構造機能相関を原子レベルで詳細に解明することを目的とする。本年度は、FRaseIのPhe-124を種々のアミノ酸に置換した変異体の酵素反応速度解析、ならびにPhe124Ala変異体およびPhe124Trp変異体のX線結晶構造解析を行った。また、FRaseIの類縁酵素である大腸菌のニトロ還元酵素NfsAおよびNfsBの結晶構造をそれぞれ、分解能1.7Åおよび2.0Åで決定した。

研究成果

• [文献書誌] Iwasaki, W., Sasaki, H., Nakamura, A., Kohama, K. and Tanokura, M.: "Crystallization and preliminary X-ray diffraction studies of a 40kDA calcium binding protein specifically expressed in plasmodia of Physarum polycephlum"J. Biochem.. 126(1). 7-9 (1999)
• [文献書誌] Kobori, T., Lee, W.C., Akagi, T., Sasaki, H., Zenno, S., Saigo, K. and Tanokura, M: "Crystallization and preliminary crystallographic analysis of major nitroreductase from Escherichia coli"Acta Crystal.. D55. 1901-1902 (1999)
• [文献書誌] 田之倉優、小堀俊郎: "フラビン還元酵素の構造決定と機能解析"バイオサイエンスとバイオインダストリー. 56(5). 319-322 (1998)
• [文献書誌] 小堀俊郎、田之倉優: "フラビン還元酵素Fraselとそのファミリー"化学と生物. 36(6). 355-356 (1998)
• [文献書誌] 小堀俊郎、田之倉優: "発光細菌Vibrio fischeriのフラビン還元酵素の結晶構造"構造生物. 5(1). 9-14 (1999)
• [文献書誌] Lee, W.C., Hirai, T., Kobori, T., Sasaki, H., Koike, H., Tanokura, M., Zenno, S., Saigo, K., Nishino, T., Murphy, M.E.P., and Adman, E.T.: "Reaction and substrate recognition of the flavin reductase FRaseI from bioluminescent bacterium Vibrio fischer : Biochemistry and X-ray crystallography of FRaseI. Flavins and Flavoproteins 1999 (Ghisla S., Kroneck, P., P, and Sund, H. eds.)"Rudorf-Weber-Agency for Scientific Publications, Berlin, Germany. 709-708 (1999)