X線構造解析と酸化還元滴定に基づいて、休止酸化型チトクロム酸化酵素のFe_<a3>-Cu_B間にはパーオキサイドが架橋していると提案されている。このことを共鳴ラマン分光法を用いて証明するため、まず^<18>O_2で標識した休止酸化型酵素の調製法を確立した。すなわち、まず嫌気条件下でアスコルビン酸とチトクロムcで完全に還元する。次に^<18>O_2により再酸化し、遠心式メンブレンフィルターを使って、アスコルビン酸とチトクロムσを完全に洗い落とす。この遠心は^<18>O_2雰囲気で行う。共鳴ラマンスペクトルの測定は^<16>O_2酵素と^<18>O_2酵素について行い比較した。その結果、励起波長423nmおよび590nmのとき、^<16>O_2で685cm^<-1>に現れるラマン線が^<18>O_2では673cm^<-1>に低波数シフトすることを見出した。この振動数は、普通のパーオキサイドの〜860cm^<-1>に比べてかなり低いが、X線結晶構造解析によると0-0距離は過酸化水素より長いので矛盾しない。685cm^<-1>のラマン線はFe_<a3>-Cu_B間に存在するパーオキサイドに帰属できる。もし、O-O伸縮振動の寄与が大きいモードだとすると^<18>O_2にしたときのシフト幅が小さすぎる(純粋なO-O伸縮振動のとき、^<18>0-^<18>Oに変えるとこのラマン線は685x(16/18)^<1/2>=645cm^<-1>に現れることが期待される)。これはこのモードが変角振動をかなり含んでいるか、あるいは2原子の酸素のうち一方が溶媒の水の^<16>Oと交換して、^<16>O-^<18>Oとなっていると考えれば説明できる。今後、H_2^<18>O中や^2H_2O中での測定、pHを変化させての測定を行い、架橋するパーオキサイドの性質を詳しく調べることが重要である。
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