チトクローム酸化酵素の電子伝達経路の理論的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11169219
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 倭 剛久 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90251587)
• キーワード: 電子移動 / アズリン / チトクロームC酸化酵素 / トンネリング・カレント / 電子移動経路マップ / 量子化学計算

研究概要

生物が光合成などのエネルギー変換を行うときには、その内部で電子移動反応が起こっている。その様な場合、金属イオンを内部に持つタンパク質で、その外部もしくは内部と、金属イオンの間で電子移動反応が起こる。タンパク質中の電子移動反応では、その他の電子移動反応ではあまり見られない遠距離の反応が起こる。それは、タンパク質を形成する物質が電子移動を媒介しているためである。その他の媒質内で何が起こっているかを調べ、タンパク質中の電子移動の実体に迫ることは生命活動のしくみを理解する上で大変重要である。
電子移動反応を考える上では、電子移動経路を知ることが重要である。その際、各原子軌道ごとの位相の効果を考えることが必要となる。そういった干渉の効果を含めて電子移動経路を調べるには、電子移動時における各原子間の電子のTunneling Currentsを調べるのはかなり効果的である。
タンパク質中電子移動反応の起こる確立は電子移動速度で表される。その電子因子は電子トンネル行列要素の二乗で表される。さらに、電子トンネル行列要素は各原子軌道間の電子トンネル行列要素の和の形で表される。さらにその各要素から、各原子軌道間の電子のTunneling Currentsを求めることが出来る。各原子間については、それらの足し合わせで表される。
タンパク質の電子移動経路を調べる指標として、そういった、Tunneling Currentsを導入した。それをタンパク質の全原子間について計算し、その値の大きい部分を集めた。また、空間的なCurrentsの分布の広がりを調べた。それらによって原子移動経路のマップの原型を形成した。

研究成果

• [文献書誌] T. Kawatsu, T. Kakitani, T. Yamato: "A Novel Method for Determining Electron Tunneling Pathway in Protein"Inorganica Chimica Acta. (in press).
• [文献書誌] N. Goto, T. Kakitani, T. Yamato, Y. Hatano: "Monte Carlo simulation study on the Structure and Reaction at Metal-Electrolyte interface II. Mechanism of Nonlinear Electrode Reactions"J. Phys. Soc. Jpn.. 68・11. 3729-3737 (1999)
• [文献書誌] M.Takano, T. Yamato, J. Higo, A. Sayama, K. Nagayama: "Molecular Dynamics of a 15-Residu Poly(L-alanin) in Water : The Helix Formation and its Energetics"J. Am. Chem. Soc.. 121・4. 605-612 (1999)
• [文献書誌] S. Yamamoto, H. Wasada, T. Kakitani, T. Yamato: "Ab initio MO study on the Potential Energy Surfaces for twisting around C11=C12 Bond of protonated Schiff Base of Retinal"THEOCHEM. 461-462. 463-471 (1999)
• [文献書誌] T. Yamato, T. Kakitani 分担執筆: "Molecular dynamics simulation of the excited-state dynamics of bacteriorhodopsin in "Photosynthesis : Mechanism and Effects" Vol III"G. Garab ed. Kluwer Academic Publishers, Netherlands. 2416(1771-1774) (1999)