研究概要 |
窒素固定菌AzotobactervinelanoiiのnifS遺伝子によってコードされるNifSタンパク質とアミノ酸配列において相同なタンパク質である大腸菌CsdBは、システイン、セレノシステイン、システインスルフィン酸に作用して原子状硫黄、原子状セレン、二酸化硫黄を遊離させる酵素で、fold-type]のaminotransferase class Vに分類されるPLP酵素である。NIFSタンパク質類の反応機構および鉄硫黄クラスター形成時の関与機構を立体構造から解明する膜非結合型生物マシーナリーの構造生物学研究を目的として、CsdBの立体構造をX線結晶解析により決定した。20mg/ml酵素溶液を1.4M酢酸ナトリウムと10μM PLPを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)に対して25℃のハンギングドロップ蒸気平衡により結晶化し、浸漬法により得た水銀および白金誘導体結晶を用いてR-AXIS IICで収集した回析データから重原子同型置換法で初期位相を決定し、DM法により位相改良した電子密度図に基づいて分子モデルを構築した。XPLORでの精密化により分解能2.8ÅでR値18.7%、Rfree値23.9%の構造を得た。二量体分子CsdBのサブユニット(分子量44,439)の構造は、7本鎖の逆平行βシートと7本のαへリックスからなるα/βフォールドの大ドメインと、β鎖4本とα螺旋3本の小ドメインおよび2本のαヘリックスを含むN末端セグメントでできていて、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AAT)と類似している。だが、顕著な特徴として、一つのサブユニットの小ドメインから大ドメインへの突起部にあるαヘリックスが他のサブユニットの大ドメインから突出したβ鎖2本を含むβヘアピンと特異な相互作用をしている。PLPとの相互作用はAAT等と類似しているが、ビリジン環にスタックする残基がAAT等ではTrpやPheなどであるのに、CsdBではHisとなっている。更に、AATで基質α-カルボキシル基を認識するArgに対応する位置にArg379が存在している。
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