研究概要 |
タバコネクロシスウィルス(TNV)は一本鎖RNAをゲノムとして持つ球状ウィルスであり、アガサ・ナス・マメ・ユリ科などの植物に感染し、壊疽症状を起こす。TNVのサブユニットは276アミノ酸残基からなる一次構造上一種類のタンパクであるが、これが180個集合してT=3の正20面体対称を持つキャプシドを形成している。TNV粒子の高分解能X線解析により、立体構造が異なる3種類のサブユニット(A, B, C)から構成されていることが明らかになった。さらにサブユニットの境界にCa^<2+>イオンがあることも明らかになった。本研究では種々な条件でTNV粒子の解離・会合を調べ、TNVの立体構造から予想される粒子の形成機構を検証した。すなわち、NaClを加えてイオン強度をあげるか、pH8〜9でEDTAを加えると、TNV粒子は解離した。これを透析で脱塩することにより、電子顕微鏡で見る限り元の粒子と区別できない粒子に再構成することができた。粒子の解離後RNase処理をすると、中空ではあるが元と同じサイズの粒子に再構成した。このことからサブユニットタンパク質に4次構造の形成能が備わっていることが明白になった。なお、粒子への再構成にはCa^<2+>(又は他の2価イオン)が必要であった。一方サブユニットの立体構造の多様性を生んでいるN末端領域のセグメントをトリプシンで除くことができた。このようなタンパクからは、元より小さな粒子ができ、この粒子の形・サイズから正20面対称的に60個会合したと考えられる。この場合でも粒子形成にはCa^<2+>イオンが必要であった。
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