脊椎動物の染色体DNAのCpG配列中のシトシン塩基の5位はしばしばメチル化されており、組織、発生段階に特徴的なメチル化模様を示す。脊椎動物では、このシトシンのメチル化は、組織特異的な遺伝子の発現、哺乳類における遺伝子刷込とX染色体の不活性化、発癌などの原因との一つとして寄与している。これは、転写因子を始めDNAに結合する蛋白質が結合配列付近がメチル化されると結合できなくなるか、メチル化されたDNAを認識して結合する蛋白質がクロマチン構造を変化させる結果であると考えられる。 染色体DNAのメチル化模様は胚発生過程で組織特異的に形成され、複製時には維持される。DNAメチル化模様を触媒するDNAメチルトランスフェラーゼ(Dnmt)は複数報告されており、これらDnmtsが様々な調節を受け、染色体DNAのメチル化模様は形成・維持されている。そのうちDnmt1は、複製点に存在し複製直後のヘミメチル化DNA(2本鎖DNA CpG配列の一方のCがメチル化されている状態)を選択的にメチル化すること、DNAの修復・複製に関わるPCNA(proliferating cell nuclear antigen)と相互作用し、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害するp21^<WAF1>と競合することが報告されている。 本研究計画では、Dnmt1とPCNAを材料として、両者を昆虫細胞/バキュロウイルス系で同時に高発現させて、複合体のまま精製し、結晶化の材料を調製することを試みる。本年度は次のような結果を得た。 Dnmt1とPCNAの発現系の開発 :Dnmt1とPCNAを昆虫培養細胞/バキュロウイルスで発現させる系をつくった。Dnmt1については精製をした。 Xenopus Dnmt1はPCNAと相互作用する :Xenopus Dnmt1はニワトリのDnmt1と同様PCNA結合に寄与するアミノ酸が保存されていないために、PCNAとは結合しないと考えられたが、予想に反して、in vitro、in vivoで結合することを見出した。
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