研究概要 |
本研究では、リボソームタンパク質BstL5と5S rRNAとの相互作用機構を明らかにするために、5S rRNAとの結合に関与するアミノ酸を特定するとともに、その役割について解析した。 まず、ループ構造とβシート構造上に位置し、なおかつタンパク質L5ファミリー間でよく保存されているアミノ酸(Asn37,Glu63,Phe77,Arg80,Thr90,Ile141,Tyr143,ASP144,ASP153)を各々Alaに置換した変異体を作成し、5S rRNAへの結合活性への関与について検討した。その結果、βシート上のAsn37,Glu63,Thr90とループ領域上のPhe77が5S rRNAへの結合活性に重要であり、ループ構造に位置するArg80,Ile141,Asp144も僅かに関与していることが解った。また、βシート構造上のAsp153とループ上のTyr143を置換した変異体は野生型BstL5と同程度の結合活性を示したことから、これらのアミノ酸残基は5S rRNAとの結合には全く関与していないことが解った。 次に、BstL5の5S rRNAとの結合に関与するアミノ酸の役割を詳細に理解するために、5S rRNAへの結合活性が減少している変異体と5S rRNAとの相互作用を表面プラズモン共鳴法を用いて速度論的に解析した。その結果、βシート上のアミノ酸(Asn37,Gln63,Thr90)を置換した変異体は、野性型と同程度の結合速度定数(約5.0 M-1・S-1)を維持していたが、いずれの変異体も野性型と比較して解離速度定数が増加していた。一方、ループ上のアミノ酸(Phe77,Ile141,Asp144)を置換した変異体は、解離速度定数(約1.0 S-1)は野性型と同程度であったが、結合速度定数が減少していた。以上の結果より、β-sheet上のアミノ酸5S rRNAとの複合体の安定化に、ループ上のアミノ酸は5S rRNAとの結合に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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