研究概要 |
本研究の目的は、タンパク質結晶の高分解能X線回折データに適用出来るab initio構造決定プログラムの開発である。そのために、申請者が開発したプログラム・LODEMの改良を行った。Protein Data Bankに実測データが公表されているタンパク質で分解能が1.2Aを越える19個を抜粋してLODEMによるテスト計算を行ってみた。その結果、Fe等の金属が含まれ,独立な原子数が800(分子量約1万)以下であれば、構造はLODEMのdefault runにより、ほぼ自動的に解けることが判明した。解けない時の対策として、Patterson最小関数法等も考慮にいれ、下の4つの方法が最も簡明かつ効果的であると判断した。 1.Default runを行った後、非対称単位中の最も大きなピークを拾い、その位相を初期値として精密化を続行する。この方法は、構造が金属原子を含む場合に有効である。 2.Default runの後、構造中に含まれる原子数の5%程度の数のピークを拾い、精密化を続行する。この方法は、金属原子を含まない構造に対しても有効である。 3.Patterson-Harker sectionから、1つの原子位置を推定し、その位相を初期値として精密化を行う。Harker section内の最も高いピークが原子の自己ベクトルに対応しているとは限らないので、幾つかの座標を推定し、多重解法を行う。 4.2次元Patterson-Harker sectionの情報を用いて、電子密度に重みを乗せて精密化を行う。すなわち、Harker section内に自己ベクトルが無いと推定される部分に対応する領域は重み0、自己ベクトルが存在する確立が高い領域には大きな重みを加える。 以上の方法を、上のテスト構造に適用した結果、19個中15個の構造決定に成功した。最大のものは、1811個の原子からなる金属蛋白質である。
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