チトクロム酸化酵素は酸化還元中心を介し、チトクロムcから分子状酵素への電子伝達を行うとともにミトコンドリア内膜の内側から外側へとプロトンの能動輸送を行う。本酵素の反応機構を明らかにするためには酸化型酵素だけでなく、還元型及び反応中間体のX線結晶構造が必要となる。また、本酵素のプロトン能動輸送機構を明らかにするためには水素の原子座標を決定できる程度の高分解能での解析が期待される。 酸化型酵素の結晶を用いた低温X線回折実験の方法を詳細に検討した結果、Spring8において1.65Å分解能の回折点を得ることに成功し、1.8Å分解能での酸化型酵素の結晶構造が得られた。また還元型酵素についても以前2.35Å分解能であったのに対し1.9Å分解能でのX線結晶構造が得られるに至った。 この2つの構造を詳細に比較したところプロトンポンプの出口と以前から考えられていたAsp51の酸化還元に伴う動きだけでなくヘムaのハイドロキシファルネシルエチル基が動くことが発見された。これがヘムaのホルミル基に水素結合するArg38に影響を与えプロトンポンプに重要な役割を果たしていることが明らかにされた。 又、P型やF型の反応中間体も結晶の吸収スペクトルを追跡しながら捕捉する方法を確立し、X線結晶構造解析を進めている。
|