研究概要 |
本研究ては集合型生物マシーテリーのひとつである肝細胞ミクロソーム電子伝達酵素群について、同一生物種(ブタ)由来の酵素群を用いてその電子伝達機能および構成酵素間の分子認識機構を解明することを目的としている。 1.本マシーテリーの構成酵素のひとつであるブタ肝臓由来NADH-シトクロムb_5還元酵素(Pb5R)中のFAD近傍の保存性の高いアミノ酸残基を系統的に置換した変異体を作製し、その酵素機能変化を解析した。その結果、49位及びC末端近傍の静電的環境変化がNADH、および本酵素により特異的に還元されるシトクロムb_5との親和性を変化させること、変異導入によって引き起こされた還元型フラビン中間体の安定性の変化が電子伝達速度に影響を与えること、を明らかにした。作製した変異体のうちH49E及びH49Kについては、結晶化に成功し、X線結晶構造解析を進めている。また、フラビン還元酵素ファミリーに共通に見られるフラビン結合モチーフ(RXY(T,S)+(T,S)モチーフ)を構成するアミノ酸残基についても系統的改変と機能解析を進めている。これまでに、Pb5R中のFADのイソアロキサジン環のN5原子に近接して存在する保存性の高いThr^<66>置換変異体(T66A、T66S、及びT66V)のストップ・ト・フロー法による解析から、Thr^<66>側鎖水酸基がFADセミキノン中間体の制御に関与していることを見いだした。これらの変異体についても結晶化を試みている。 2.既に大量発現系を構築したブタ肝臓シトクロムb_5(Pb5)に引き続き、Pb5からの電子受容体酵素のひとつであるフタ肝繊シトクロムP-450還元酵素(PCPR)の構造遺伝子をクローニングした。現在、大腸菌によるPCPRの大量発現系を構築中である。
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