研究課題/領域番号 |
11169236
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
島田 秀夫 慶応義塾大学, 医学部, 助教授 (80095611)
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研究分担者 |
堀 洋 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (20127294)
永野 真吾 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (60286440)
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キーワード | シトクロームP450 / カンファー / プチダレドキシン / アミノ酸置換 / X-線結晶構造解析 / 水素結合のネットワーク |
研究概要 |
カンファー水酸化酵素系の末端一原子酸素添加酵素であるシトクロムP450camは、活性中心にヘムを有する。酵素反応では、基質カンファーと結合した還元型P450camは、還元型の鉄イオウ(2Fe-S)たんぱく質、プチダレドキシン(Pd)および酸素分子と3者複合体を形成する。複合体内でPdが酸素化型P450camを還元するとカンファーの水酸化が起こり、PdとP450camはそれぞれ酸化型に変換され反応が終了する。我々は上述した3者複合体、あるいは酸素の代わりに一酸化炭素、一酸化窒素がP450camに結合した3者複合体の類似体が形成されるとP450camとPdに同時に構造変化が誘導されることを既に見出している。しかし酸素が結合した複合体でのPdの構造変化は見出したが、P450cam側の構造変化の検出は難しく今後の問題として残っている。本年度は誘導機構の解析を行った。 P450camのPd結合部位と推定されるアミノ酸残基Arg109、Arg112 のLys 変異体は、上記の3者複合体の一酸化炭素型類似体が形成されても二つのたんぱく質の構造変化の程度が少ない。従ってこれら変異酵素は構造変化の誘導機構を理解しる上で重要なたんぱく質と考えられ、Lys109とLys112変異体のX-線結晶構造解析を行った(理研・播磨研究所との協同研究)。その結果、どちらの変異体においてもPdと複合体を形成すると野生型に比較して水素結合一つが消失すると推定された。この結果は、この複合体の解離定数が変異によって約100倍程度大きくなることと一致する。さらに変異酵素の構造からPdとP450camとの複合体が形成されて生じる鉄イオウクラスターとヘムの間に張り巡らされた水素結合のネットワークが両たんぱく質の構造変化に重要と示唆された。
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