高等真核生物では、他の生物には見られない、特有のアミノアシルtRNA合成酵素「超高分子複合体」が観察される。このアミノアシルtRNA合成酵素超高分子複合体の構造、生物機能を解析することを目的として、本研究では、ヒトアミノアシルtRNA合成酵素のバキュロウイルス発現系を構築し、ウイルスの多重感染能力を利用した昆虫細胞内でのヒトアミノアシルtRNA合成酵素超高分子複合体の再構成システムの確立を目指した。平成11年度の具体的研究成果は次の通りである。(1)複合体を形成している8つのアミノアシルtRNA合成酵素全長cDNAを利用し、これらのバキュロウイルス発現系の完成した。(2)これらアミノアシルtRNA合成酵素の高等真核生物に特徴的な付加ドメインを欠失した変異体についても、同様のバキュロウイルス発現系を構築した。(3)アミノアシルtRNA合成酵素複合体に含まれる非アミノアシルtRNA合成酵素成分である3つのタンパク質のうち、まだその遺伝子がクローニングされていなかったp18について、そのcDNAをヒトから単離した。(4)非アミノアシルtRNA合成酵素成分3種についても発現系を構築した。(5)詳細な解析に供する目的で、プロリルtRNA合成酵素に対するウサギ抗体、また3種の非アミノアシルtRNA合成酵素成分に対するウサギ抗体を作成した。(6)抗体取得が難しいロイシルtRNA合成酵素については、エピトープを付加したバキュロウイルス発現系を構築した。これらの成果によって、次の段階である、昆虫細胞内でのアミノアシルtRNA合成酵素超高分子複合体の再構成実験に進む体制が整った。
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