研究概要 |
「生物マシーナリー」特定領域研究では,シンクロトロン放射光を利用して複合体型マシーナリーと集合系型マシーナリーを研究する.SPring-8では,複合体型マシーナリーの研究にはBL41XUが,集合系型マシーナリーにはBL40B2が適しており,本年度はBL40B2の高度化研究を進めた.集合系型マシーナリーでは,系を構成する多数の蛋白質の構造を網羅的に迅速に決定する必要がある.その中には,サイズが数十ミクロンと極端に小さい結晶しか得られないものも多い.このような場合には入射X線による結晶試料の損傷を回避することが特に重要となり,それには結晶試料を可能な限り低温に保つことが有効である.そこで本年度はまず第1に,到達温度30Kの「ヘリウムガス冷却ゴニオメータ装置」をBL40B2に導入して,従来の窒素ガス冷却による到達温度から一気に70Kの低温化をはかった.このような低温実験では,ビームラインを利用する前に実験室系の回折計を利用した試料の準備が不可欠である.そこで「実験室系X線発生装置」を整備してオフラインにおける低温試料の検定を可能とした.集合系型マシーナリーの研究では関連するタンパク質が多数におよぶため,それぞれの結晶構造解析をルーチン化するとともに,解析計算に要する時間の短縮が必要となる.そこで「タンパク質構造解析計算機用サーバー」を導入し,蛋白質結晶構造解析の迅速化をはかった.またBL40B2で回折強度測定を行う共同利用ユーザーの結晶試料を保存するために「結晶用インキュベータ」を2台(設定温度20℃,4℃)用意して,ユーザー実験の利便性を確保した.
|