研究概要 |
本研究の目的は、前頭連合野における認知機能――とくに選択的注意とワーキングメモリー―の脳内再現様式(マップ)とその可塑的変化を明らかにすることにある。 この目的のため、今年度は、選択的注意とワーキングメモリのニューロン過程が前頭連合野のどの部位で進行するか,サルを用いて解析した.まず,2頭のサルに,眼球運動による遅延反応(oculomotor delayed-response, ODR)と遅延視覚探索(oculomotor delayed visual search, ODVS)を行わせ,前頭連合野背外側部からニューロン活動を記録した. 遅延期に方向選択的な活動を示した162のニューロンのうち,87(54%)はODRとODVSの両方で遅延期活動を示した("Delay-neuron").このニューロン群は一般的なメモリシステムを担うと考えられる.一方,残りの75(46%)は,ODVSのみで遅延期活動を示した("Search-delay neuron").これらは「選択的注意と結びついたメモリシステム」を特異的に再現すると考えられる.さらに,これらのニューロン群での遅延期活動の時間経過は類似していたが,その皮質内分布ははっきりと異なっていた.すなわち,Search-delay neuronsは,Delay neuronsよりも,より尾側の領域(46野尾側と8A野)にまとまってみつかった. これらデータから,前頭連合野において「選択的注意用メモリシステム」と「一般的メモリシステム」が並列的に多重したマップを形成していることが示唆される.
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