研究概要 |
1.GABA作動性[Cl^-]_i変動及び[Cl^-]_i調節機構の発達過程のCl^-イメージングによる解析: Cl^-感受性蛍光指示薬のMEQを負荷した脳スライスで、Cl^-イメージングにより[Cl^-]_iを測定し、生後1-2週齢では生後3週齢以降に比べ[Cl^-]_iが高値をとり、GABAによりCl^-が流出することを大脳皮質と視床で明らかにした。Na^+,K^+-2Cl^-cotransporterによるCl^-取込みとK^+-Cl^-cotransporterによるCl^-汲出しの両者が働くなかで、前者の方が優勢であることが原因であることを明らかにした。 2.エネルギー欠乏時の神経回路機能変化に関与する[Cl^-]_i変化とCl^-トランスポーター機能変化の検討: 幼若ラット大脳皮質スライスの無酸素無グルコースによる[Cl^-]_i変化を測定し、pseudo-ratiometric法により細胞容積変化を同時モニターした。一過性の[Cl^-]_i減少と、それに引き続く不可逆的[Cl^-]_i増加が認められた。後者は細胞膨化を伴っていたが、前者は明らかな細胞容積変化を伴っていなかった。この虚血性の一過性[Cl^-]_i減少は世界で初めて我々が明らかにした。ATP減少によるNa^+,K^+-2Cl^-cotransporter(NKCCl isoform)の機能低下が示唆され、この現象がII/III層に多いことから、回路機能との関係に注目し、その制御機構を解析中である。 3.パッチクランプ/RT-PCR法による[Cl^-]_i変化とCl^-トランスポーター遺伝子発現変化の解析: Cl^-トランスポーターのKCC1,KCC2,NKCC1,NKCC2及びCl^-チャンネルのClC2のnested primerを合成し、グラミシジン穿孔パッチクランプ法でGABA逆転電位を計測後にsingle-cell multiplex RT-PCRを行った。細胞個々の[Cl^-]_iのちがいと、各種Cl^-トランスポーターmRNAの発現状況を解析中である。また、キンドリングラットの梨状葉皮質でKCC2のdown-regulationがおこることをin situ hybridization法で明らかにし、神経活動依存性のCl^-トランスポーター発現変化を証明した。
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