研究概要 |
1.Cl^-と細胞容積の同時モニター法の開発: Cl^-感受性蛍光色素のMEQによるCl^-イメージングでは[Cl^-]_i変化に伴う細胞容積変化による測定誤差の可能性を否定できない。そこで、355nm/490nmの励起光と450nm/520nmの蛍光に対応したdual bandpass filterを作製し、細胞容積変化のみを反映するcalcein(490/520nm)をMEQ(355/450nm)と同時負荷しCl^-と細胞容積の同時モニターによるpseudo-ratiometric Cl^-imaging法を確立した。 2.Cl^-イメージングによる新生ラットの細胞タイプ別[Cl^-]_iとGABA作用の差異の解析: 神経細胞の静的[Cl^-]_iを生後発達過程の大脳新皮質のCajal-Retzius cell,cortical plate neuronや各層の錐体細胞でCl^-イメージング法で測定した。Cajal-Retzius cellでは[Cl^-]_iは約38mMと高値であった。cortical plate neuronや錐体細胞でも、生直後は約35mMと高値であったが発達とともに低下し、生後3週では7mMに激減した。[Cl^-]_iが高値となる原因はNa^+,K^+-2Cl^-cotransporterによるCl^-取り込みがK^+-Cl^-cotransporterによるCl^-汲み出しに勝るためであると考えられた。また、cortical plateや生後1週の皮質層では、浅層の細胞で深層の細胞より[Cl^-]_iが高い傾向があったが、生後2週でその差は消失した。Cl^-とCa^<2+>のイメージングの結果では、生後10日以前ではGABAによりCl^-流出(=脱分極)がおこりCa^<2+>流入(=興奮)を惹起しているが、それ以降ではCa^<2+>流入は起こらない事が明らかとなった。 3.Cl^-ホメオスタシス関連遺伝子群発現状況と[Cl^-]_iの相関の解析: in situ hybridization法で解析した結果、KCC2(K^+-Cl^-cotransporter)mRNAの発現は生後発達とともに増加し、NKCC1の発現は逆に生後発達とともに減少するが、生後2週までは浅層で強く発現し、その後その局所的な差が無くなるとともに発現量も激減した。この結果はCl^-イメージング法の結果を支持していた。
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