研究代表者は、大脳皮質錐体細胞において、脱分極性スパイク後電位がCa2+依存性のカチオン電流に担われており、その増強によりバースト発火が生じることを明らかにしてきた。こうしたバースト発火の周期的発現は記憶・認知と関連して発現するガンマ帯脳波の生成に関与すると考えられている。そこで、Ca2+依存性のカチオン電流の増強機構についての研究を行ってきた。このカチオン電流は脱分極パルスのオフセットで発生するslow tail電流により特徴づけられ、カフェイン依存下で脱分極パルスを反復して与えると著名に増強された。こうした電流の増大は、CICRの増強による細胞内Ca2+濃度の増加によって生じたか、或いは、カチオン・チャネル自体のCa2+感受性が増大したことによると考えられた。そこで、tail-Iの測定と同時に細胞内Ca2+の濃度変化の測定を行った結果、コントロールで得られたCa2+濃度-電流関係が、カフェイン投与により、より低Ca2+濃度側にシフトし電流のCa2+感受性の上昇が認められた。しかしながら、こうした現象はCaM-KIIの特異的ペプチド阻害剤であるAIPの存在下では認められなかった。従って、CaM-KIIの活性化により、Ca2+依存性カチオン電流のCa2+感受性が上昇することが明らかとなった。
|